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読書会のご報告

忘日舎では不定期に読書会をおこなっています。

これまで開催したものにつきまして、各回の内容を記しました。

今後もつど開催してまいります。ぜひお気軽にご参加ください。

*これまでおこなった読書会*

Vol. 1 与那原恵『サウス・トゥ・サウス』

2016年6月18日(土) 19時〜

《満員御礼!》

第1回目となる読書会は与那原恵『サウス・トゥ・サウス』を取り上げました。

沖縄や台湾、いつも旅をしているように生きる著者のエッセイからは、人と出会う

ことのかけがえのなさがいくつも書かれています。

本書はそれぞれ異なる媒体で書かれたエッセイを一冊にまとめたもの。旅の記録から、新聞や雑誌に掲載されたご自身の記憶をめぐるお話までがのっています。

読書会では、自らのルーツをたどっていくことの意味、またテキストからガルシア=マルケスの小説を連想する、という感想をのべて

くださった方もいました。

また、今回は参加されたみなさんがひととおりの感想を述べられたあと、後半に著者の与那原さんにご来店いただきました。ご参加いただいたみなさんと歓談、さながらゲストハウスのような、旅を

感じさせてくれる時間となりました。ガーデン・オブ・ジョイキッチンさんの仕出し料理も最高でした。

 

Vol. 2 ブレイディみかこ『ヨーロッパ・コーリング』

2016年8月27日(土) 18時〜

EU離脱も記憶にあたらしいイギリス。2回目の読書会は話題となった在英ジャーナリスト

ブレイディみかこさんによる『ヨーロッパ・コーリング』を取り上げました。帯文も刺激的で、現在のイギリス、またヨーロッパ諸国で起きていることを参加者のみなさんと語り合う

貴重な機会となりました。

本書は、イギリスで保育士として働くブレイディさんが現地の新聞やメディアからの情報を独自の視点でまとめ、日誌形式で綴っているもの。日が現在に近づくにつれ、緊迫感が強く感じられる、まさに現在進行形のエッセイでした。刊行直後にEU離脱が決まったことから、2刷に増補された部分も読書会でそれぞれに確認しました。

しかしながら、そういえばイギリスのことを、実は知っているようで知らなかった(店主)....こともありまずはレジュメを作成。冒頭に「ロンドン・コーリング」を流し、イギリスの基礎情報を参加いただいたみなさまと共有しました。そのうえで、「これは現代イギリス、ヨーロッパのための「ガイドブック」では」という鋭いご指摘があったほか、議会制民主主義について、また現代日本の政治・社会問題など、20代から70代まで幅広い年齢層の方々と遅くまで語り合うこととなりました。

 

Vol. 3 竹西寛子『管絃祭』

2016年9月3日(土) 18時〜

第3回の読書会は竹西寛子『管絃祭』。広島で被曝した著者自身と思しき主人公の体験、また友人知人などの、複数の視点から物語が描かれています。戦争と原爆がもたらした日常が淡々とつづられていますが、いくつもの視点が輻輳されているため、テーマが立体的に浮かび上がってきます。とても読み応えのある一冊で、参加された方々それぞれに読み方が異なり、意見の交換などはたいへん充実したものとなりました。

参加された方からは、「竹西さんの文章が美しい」、「物語のつくりが円環構造になっている」、「複雑な人間の気持ちをとても上手くすくい上げていると思う」などの感想があったほか、いわゆる原爆に関係する他の小説などについても話がおよび、話題は多岐にわたりました。

 

Vol. 4 ジョージ・オーウェル『一九八四年』高橋和久 訳

2016年9月10日(土) 18時〜

今年就職した学生さんと共催のかたちで、ジョージ・オーウェル『一九八四年』を読書会で

取り上げました。「ビッグ・ブラザー」が統治する国家に生きることの主人公たちの葛藤は、現代人にそのまま当てはまるようでした。「監視社会」と「自由」についてというお題で本書を読み解き、さまざまに語り合いながら、おおくの意見が飛び交いました。

本書に出てくる「テレスクリーン」、すなわち監視社会の象徴としての装置については、「いまのほうが進んでいるだろう」という意見にはっとさせられました。あるいは、「ニュースピーク」ということばから、現代生活で使用することばはどんどん貧しくなり、ものごとを抽象的に捉える語彙が減っていることに改めて気付かされる、などといった感想が述べられました。

同調への圧力といった問題も若い方々から語られ、たいへん重たい内容の本でしたが、現代社会を捉えるうえでもきわめて示唆的な、意義深い読書会となりました。

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